調停離婚を申し立てられた場合

離婚調停を申し立てられたら

夫婦間で協議離婚の話し合いをしても折り合いがつかない場合に,夫婦のいずれか一方が申立人となり家庭裁判所に申し立てをすれば,調停委員を間に入れた離婚調停(夫婦関係調整調停)が行われることになります。

この調停の申立てをするにあたり,夫婦間での合意は要りません

離婚調停が申し立てられると,事件番号が付されます。申立てから1週間程度したら裁判所側で担当する裁判官と調停委員が決定され,離婚の調停期日が決まります。

調停を申し立てられた側は,ある日突然家庭裁判所から書類(申立書,呼出状等)を受け取り,調停の第1回期日に裁判所に出頭することを求められます

 

この第1回期日は,調停を申し立てられた側の意見を聞いた上で決められるのではなく,裁判所から書類が届いた段階で既に特定の日時に決まっており,申し立てられた側の事情で変更されることは,基本的にありません

また,裁判所からの書類を受け取った日から第1回期日までの期間が,3週間~1ヶ月足らずしかないこともよくあります

 

大多数の方にとっては,離婚調停の申立てをされるのは初めてのことであり,予告もなく送られてくる家庭裁判所からの呼び出し状に困惑,混乱してしまうこともあるでしょう。あるいは,あなたにとっては寝耳に水の出来事で,とても驚き,怒り,あるいは焦ってしまうかもしれません。

このように,離婚調停を申し立てられた側は,裁判所からの調停の呼び出し状を見ただけで取り乱してしまい,第1回期日に向けた準備を落ち着いて行うことができなくなるケースは少なくありません。

しかし,そのような状態で,十分な準備も整わないまま調停期日に臨んでしまうと,自己に不利な状況のまま調停手続きが進行してしまうリスクが高くなってしまいます。

そこで,今回は,離婚調停の相手方として最低限すべきこと,調停の呼出しを無視して欠席した場合の不利益についてまとめたいと思います。

 

離婚調停の相手方として最低限すべきこと

郵送されてくる書類の中には,()調停期日通知書(呼び出し状ともいう)、(イ)申立人が家庭裁判所に提出した離婚調停(夫婦関係調整調停)申立書の写し,()意見や事情に関する照会書(答弁書又は回答書)などが入っていることが一般的です。

したがって,離婚調停の相手方として最低限やらなければならないことは,指定された期限までに照会書の内容に回答し,その上で,指定された期日に家庭裁判所に出向き,調停に出席することです。

離婚調停の呼び出し状が突然送られてきたのですから,様々な感情が沸き上がるかもしれません。しかし,いったんそのような感情を横に置いて,自分がすべきことを落ち着いて確認するようにしましょう。

 

調停の呼出しを無視して欠席した場合の不利益

受け取った離婚調停の呼出状を無視することは,決してお勧めできません。

離婚調停は,裁判所(裁判官および調停委員)に間に入ってもらって行う当事者同士の話し合いです。もし呼び出しを受けている離婚調停期日に無断欠席し続け,話し合いに応じない場合には,調停は不成立となり終了します。

その場合,欠席した相手方当事者は,次のような(1)法律上の不利益と(2)事実上の不利益を受けることになります。

 

(1)法律上の不利益

相手方の無断欠席により調停が不成立に終わると,申立人は,直ちに離婚訴訟を提起することができるようになります。つまり,本来は離婚について調停と訴訟の2段階で争う機会があるにもかかわらず,そのうちの貴重な1回を失うことになってしまいます。

調停に出席して冷静に協議・交渉を行えば,柔軟な離婚条件での早期解決を図ったり,想定以上の大きな譲歩を相手方から引き出すことができたりする場合もあります

しかし,離婚訴訟になると、そのような解決方法を目指すことが難しくなってしまいます。

さらに,申立人が離婚調停とともに婚姻費用の分担請求調停を申し立てている場合,これが不成立に終わると自動的に審判という手続きに移行します。そして,裁判官は,申立人の言い分のみを聞いて,婚姻費用として支払うべき額を決定することになります。

 

(2)事実上の不利益

第1回期日で不成立とならない場合でも,呼出状を無視し,正当な理由もなく離婚調停に出席しないという態度を繰り返すと,裁判官や調停委員から,離婚という人生の節目の大切な話し合いに真摯に向き合わない不誠実な人,ルールを無視する自己中心的な人といったネガティブな評価をされかねません。

その後,気持ちを改めて調停に出席するようになったとしても,この評価を覆して裁判官や調停委員を自分の味方につけ、調停を有利に進めることはなかなか容易ではないでしょう。

いったん調停委員の心証を悪くしてしまうと,その後の調停手続で離婚条件(親権,面会交流など)の決定の際,結果論として不利な立場に立たされることにつながりかねません。

また,離婚調停が不成立となり離婚訴訟に移行した場合には,相手方が呼び出しを無視し続けて調停不成立に終わらせたという事実が証拠として残るため,離婚訴訟においても不利益が生じてしまいます。

 

 



監修者:弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡
[経歴]
東京大学卒業
第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録

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