調停離婚を弁護士に依頼するメリット

離婚調停を弁護士に頼むメリットと費用

離婚調停は本人だけでも行うことができるため、必ずしも弁護士に依頼しなければならないということはありません。

ですが、不慣れな手続きや交渉の場面において、弁護士は非常に心強い存在です。離婚調停で夫婦間のトラブルや離婚の協議を行う場合、弁護士に依頼することで、自分の主張を正しく伝え、不利益な条件を避けることにつながります。

とはいえ、

・弁護士費用はいくらかかるのか?

・弁護士に頼むと何をしてくれるのか?

・弁護士に依頼するデメリットは?

・弁護士に依頼する必要性があるのか?

など、色々な疑問点や不明点があるかと思います。

そこで、今回は、離婚調停を弁護士に依頼するメリットや弁護士が代理人として行う業務内容について説明します。合わせて、どのような場合に弁護士に依頼したほうがよいか、具体的なケースを紹介します。

離婚調停までに準備するべきこと

調停離婚(離婚調停)は、夫婦の一方が申立人となり、裁判所に間に入ってもらって離婚するかどうかや、その条件を話し合っていく手続きです。

調停委員が間に入るという特徴はありますが、離婚調停も、当事者間で話し合いによる解決を図る制度であることを押さえておきましょう。

調停期日に臨むにあたり、あなたの考えや希望を今一度整理し、調停委員に納得してもらえるような説得的な主張をすることができるように準備することが重要です。

① 話し合いたいことをはっきりとさせておく

自分が何について相手と話し合いをしたいのか、どのような希望や要望を持っているのか、調停期日までにその理由も含めてしっかり考えておくことが重要です。自身の主張をしっかりと伝えられなければ、調停委員に自分の考えを理解してもらい、味方になってもらうことはできません。

特に以下の内容については、調停期日までにしっかり整理しておくことが大切です。

・離婚するかしないか

・慰謝料の希望金額

・財産分与の希望金額

・未成年の子の親権者は誰にするか

・未成年の子との面会交流の有無、方法、時期、頻度

・未成年の子の養育費(1人当たり毎月いくら必要か)

・年金分割(3号分割)の按分割合

② できるだけ証拠となるものを集めておく

例えば、相手の不貞行為(不倫・浮気)を理由に離婚を決意された場合、相手が不貞行為があったことを否定して慰謝料請求や離婚に応じない可能性があります。

このように、夫婦間で言い分が異なっている場合には、あなたが主張したい事実に関する証拠(不貞行為があったことを立証できるような写真、メッセージのやり取り等)を確保することがとても重要です。

相手にとって不利な事実があったことを証明することができれば、慰謝料の増額などあなたにとって有利な結果を得ることができます。また、争点が1つ減ることになるので、早期の離婚調停の決着にもつながります。

相手が自分の言い分を争ってくることに備えるという意味でも、自分の主張を裏付けるに足りる証拠を調停期日で提出することができるように準備しておくことが必要です。

③ 離婚調停の流れについて知っておく

離婚調停の仕組みや内容を知ることは、落ち着いて、より充実した離婚交渉をすることにつながります。

離婚調停の大まかな流れは,次のようになっています。

①調停前の準備期間

②離婚調停の申立て(あるいは,離婚調停を申し立てられる)

③第1回調停期日

【各期日当日の流れ】(第2回調停期日以降も同じ)

ⅰ離婚調停の受付

ⅱ調停が始まるまで控え室で待機

ⅲ第1回調停期日の最初のみ同席で離婚調停手続きの説明を受ける

ⅳその後の離婚調停手続きの流れ

ⅴ次回の離婚調停期日の決定

④第2〜3回調停期日

⑤第4回調停期日(成立・不成立見込みの調停期日)

⑥調停成立後の手続き

⇒離婚調停の流れと注意点については、詳しくはこちらの記事にまとめています。是非ご覧の上参考にして下さい。

離婚調停を弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼することで、直接相手や裁判所とやり取りしなければならないという精神的な労力を負うことから解放されます。また、貴重な時間を節約することができます。特にメリットといえるのは、以下の5つです。

① 期日までの限られた時間に間に合うよう、迅速な準備ができる

調停を申し立てられた場合,期日までの時間的余裕がない場合が多く、すぐに調停への対応を迫られます。

弁護士は,相談者固有の事情を聴取したうえで,離婚調停の内容や手続を相談者にわかりやすく説明し,また,相談者がその時に置かれている状況を説明します。その上で,個々の相談者の立場を踏まえた上で,最適なアドバイスを行います。

弁護士に依頼することで,最短で最適解を得ることができますから,限られた準備期間の中で十分な準備ができます。

② 調停委員を説得する高い交渉力

調停委員は、中立的な立場のため、どちらにも肩入れをすることはありません。

調停委員に、あなたの主張を正しく理解してもらい、共感してもらうことが重要になってきます。そのためには、調停委員を説得する高い交渉力が必要です。

弁護士は依頼者とともに調停に出席し,効果的に交渉を進めていくために適切なアドバイスを行うことができますから、交渉力を補う力強い味方になってくれます。

 

③ 自己に不利益な内容の合意を防ぐ

いったん離婚条件(調停条項)に同意して離婚調停が成立すると,調停調書には確定判決と同じ効力が生じ,後からその条件を変えることはできなくなります。

弁護士に依頼することで,条件(調停条項)の意味が分からないまま自己に不利益な内容の同意をしてしまうことを防ぎ,取り返しのつかない失敗をすることを回避することができます。

さらに,離婚調停の段階から弁護士に依頼しておくことで,万が一離婚調停不成立となった場合にも,迅速に離婚裁判に移行することができます。

④ 調停期日において自分の主張を伝えやすくなる

離婚調停を何度も経験される方は少ないでしょうから、ほとんどの人にとって、離婚調停は初めての経験になります。

離婚調停では、思った以上に調停委員に自分の主張を的確に伝えることができないものです。

調停期日当日のサポートはもちろんのこと、事前の打ち合わせを通じて弁護士は依頼者の希望や想いをしっかりとお聞きします。事前の打ち合わせを通じてあなたの考えを整理する機会があることも、調停期日で本当に必要なことを伝えるための重要な準備と考えてください。

⑤ 解決までの期間を短縮できる可能性が高まる

調停委員に共感してもらうためには、あなたの思いや主張を裏付ける客観的事実(証拠)が必要です。

弁護士は手持ちの証拠価値を踏まえて調停に臨みますから、無駄のない対応をとることができます。そのため、弁護士に依頼すると、離婚調停が早期にまとまりやすい傾向にあります。

ご自身にとって不利益な条件での離婚を防いだり、調停成立までの期間をなるべく短縮したい場合は弁護士に依頼することをおすすめいたします。

弁護士が代理人として行ってくれること

離婚調停の依頼を受けた弁護士は、あなたの希望を最大限通すことができるように、事実関係を聴取・整理した上で、調停期日に向けてベストな戦略を立てます。そして、離婚調停が始まる前から終わった後まで、あなたにとって最善の結果となるように法的観点から必要なアドバイス等を行います。

① 相手方及び裁判所との連絡の窓口になってくれる

弁護士が代理人として窓口になるため、相手と直接話をしなければならないというストレスから解放されます。特に「暴力を受けていた」「相手が高圧的で話し合いにならない」といったケースであれば、第三者が間に入ることでスムーズに話を進められる糸口にもなります。また、調停期日の調整なども弁護士が裁判所と連絡をして進めるため、慣れない手続きの手間や負担もなくなります。

② 調停申立ての準備や必要書類の収集を行ってくれる

離婚調停を申し立てるにあたり書面の作成が必要となりますが、弁護士に依頼すれば面倒な書類作成はすべて任せることができます。また、調停の申立ての際には、戸籍謄本(全部事項証明書)や住民票なども取得して提出することが必要ですが、これらも弁護士が代行することができるので、依頼者自身で準備しなければならない手間と時間を節約することができます。

③ 裁判所外での証拠収集や事実調査を行ってくれる

不貞行為や家庭内暴力などをきっかけとした離婚の場合、裁判の際に提出する証拠や情報が必要です。弁護士であれば、弁護士会を通じて役所や金融機関等に照会をかけることができるため、有利な証拠や必要な情報を取得できる可能性が高まります。また、追加で収集すべき証拠等についても法的観点からアドバイスをすることができます。

④ 調停期日への同行

調停期日には当事者本人の出席が必要です。裁判所の許可があれば、ご両親や友人も同席することができますが、弁護士以外の第三者の同席が認められることは少ないです。

また、調停では調停委員を説得する交渉力が非常に重要です。交渉のプロである弁護士が同席することで、あなたの交渉力を補うことができます。それに、弁護士をつけることで、あなたの真剣さを示すことができます。

⑤ 調停後のアドバイスを行ってくれる

調停が成立した場合には、離婚届の提出にあたり必要な調停調書謄本の申請・取得を弁護士が行うことができます。また、子の氏(苗字)の変更、年金分割など離婚に付随する手続きについてもアドバイスを行うことができます。

反対に、調停がまとまらなかった場合には、離婚訴訟に向けて引き続き依頼を受けることにより速やかに訴訟に向けた方針を立て、的確な対応を取ることが可能となります。

弁護士に依頼した際の費用

離婚調停を弁護士に依頼する場合の費用は、弁護士事務所によって異なります。一般的には、相場は総額で約70万円から100万円とみておくと良いでしょう。

ただし、委任契約を結ぶ際にこれらの金額をすべて支払わなければならないというわけではありません。下で説明するように、成功報酬は調停の決着が着いた後に、お支払いいただく金額になります。

内訳①   相談料

離婚調停を弁護士に依頼する場合、弁護士に依頼するか等を判断するために、まずは法律相談を申し込むことが一般的です。初回相談は無料で行っている弁護士事務所も多いため、まずは気軽に相談してみてもよいでしょう。2回目以降は5000~10000円程の金額を設定していることが多いです。

当事務所でも、初回相談を無料としています。

内訳②   着手金

実際に弁護士に依頼した場合にかかる費用になります。依頼した結果が自分の希望通りになったか否かにかかわらず支払うお金になります。

着手金の相場は、20万円から30万円です。

途中で依頼をやめても返金を求めることは基本的にできないことには注意してください。

内訳③   成功報酬

事件が終了したとき,結果に応じて着手金とは別に支払う弁護士費用のことを指します。

離婚調停が成立した後に、成功報酬として20万円から30万円を設定している事務所が一般的です。

さらに、離婚調停と同時に慰謝料請求、財産分与、婚姻費用分担請求を行っていた場合には、獲得した金額に対して10%から20%の金額を追加で成功報酬として設定していることが通常です。その場合、成功報酬が差し引かれた金額が依頼者の受け取る金額になります。

例えば、離婚調停と並行して相手に不貞慰謝料請求を行い、200万円の慰謝料請求が認められた場合、報酬金30万円と200万円の16%である32万円を合せた62万円が成功報酬になります。

※親権,監護者について争いがある場合は、着手金・報酬金の額は増額となることが一般的です。

内訳④   実費及び日当

離婚調停を申し立てるにあたり、裁判所に収入印紙代や切手代を納めなければなりません。また、依頼者に代行して取り寄せる戸籍謄本・登記簿謄本等の費用や、弁護士が裁判所を往復する交通費がかかります。

これらの実費については、弁護士費用である着手金・報酬金・日当とは別に,ご依頼者の負担となる契約が通常です。

また、遠方の裁判所で離婚調停が開かれる場合には、弁護士の出張代として日当が弁護士費用に加算されることがあります。

・裁判所に提出する収入印紙1200円

・連絡用の郵便切手 約1000円分

・戸籍謄本代 約450円

は最低限かかりますから、約4000円から5000円の実費の負担は見込んでおいてください。

弁護士への依頼を特にお勧めするケース

費用面を除けば、弁護士に依頼するデメリットは特にありません。また、可能ならば迷わず弁護士に依頼したほうが良いケースがあります。以下の3つのケースでは、弁護士に依頼することを特にお勧めします。

① 当事者間で離婚の話し合いができない場合や、相手が離婚に強く反対している場合

・感情的になり,冷静になってお互いの条件などを話し合うことができない

・暴力や暴言を受ける恐怖から,相手に離婚を切り出すことができない

・離婚したいことを伝えたにもかかわらず,その話についてうやむやにされる

このような場合には,離婚協議が停滞してしまいがちになります。

法律のプロでも交渉のプロでもある弁護士という第三者を間に入れることで、離婚交渉が一気に進展する場合が非常に多いといえます。

② 相手方が弁護士に依頼している場合

離婚調停は調停委員を交えた話し合い、互譲の場ですから、相手が弁護士を立てたとしても、あなたが離婚や離婚条件に合意しなければ調停離婚は成立させることができません。そうであっても、相手がすでに弁護士に依頼している場合、あなたが一人で離婚調停に臨むことにはリスクが伴います。

法的知識の差、調停委員を味方につけるために必要な交渉力の差、経験の数の違いから瞬時に適切な判断をする能力の差などから、どうしても自力で対等に交渉を行うことは難しいことが多いからです。

また、2対1でのやり取りとなり心理的にも不利になる可能性がありますから、弁護士のサポートを得ることも選択肢として検討するべきです。

③ 離婚条件で揉めている場合

離婚すること自体については夫婦間で合意がある場合であっても、離婚条件に折り合いがつかなければ調停離婚を成立させることはできません。

具体的には、財産分与,婚姻費用、親権問題、慰謝料金額等、離婚条件が決まらない場合、離婚調停が停滞します。

特に未成年の子どもがいる場合、夫婦のいずれか一方のみが未成年の子どもの親権者になります。したがって、未成年の子どもの親権者をどちらにするか決めない限りは離婚をすることができません。

離婚条件で揉めている事項が多いほど、どこは妥協してどこは譲らないかという取捨選択が必要になってきます。また、効果的な戦略を立てることは離婚調停の経験がなければ難しいと考えます。

以上より、離婚条件で揉めているケースでは、弁護士に依頼することで問題を解決に向けて進展させることができる可能性が高いです。

まとめ

離婚調停の依頼を受けた場合、代理人である弁護士は、依頼者が最大限の利益を得られるように、最終的な着地点を見据えつつ適切な方針を立てます。

そのような目的を実現するためにも、できるだけ早い段階、可能であれば裁判所からの調停期日呼出状を受け取った直後に弁護士に相談することが望ましいです。

弁護士に相談するよりも前に裁判所から届く回答書・照会書に回答してしまうと、後々の主張と整合性が取れない状態に陥ることや、相手に有利な回答をしてしまうこともあり、結果的に不利な交渉を強いられる危険性があります。

当事務所の弁護士は、相談者お一人お一人の希望を実現するため、相談者の事情を丁寧に伺い、親身に対応をすることを心掛けています。

岡山地域にお住まいの方で離婚調停の申立てを検討されている方、あるいは相手から離婚調停の申立てをされた方は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。



監修者:弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡
[経歴]
東京大学卒業
第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録

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