婚姻費用の(新)算定表について 算定表とは?旧算定表と新算定表の違いは?

婚姻費用とは?どうやって計算する?

婚姻費用とは、夫婦間で分担すべき家族の生活費のことをいいます。実務上、例えば、夫婦が別居している場合に、収入の少ない側から多い側に対し、「自分たちは結婚しているのだから生活費を負担してください。」という形で、婚姻費用の分担を請求することが行われます。
この婚姻費用の分担額を計算するのに、実務上、算定表というものが使われています。また、令和元年12月にこの算定表が改訂され、新しい基準の下、算定がされるようになりました。
この記事では、そんな算定表について解説いたします。

婚姻費用の算定表とは?

どうして作成された?

従来の婚姻費用の求め方

婚姻費用は、ざっくり言うと、次のような考え方に沿って計算されるのが本来です。
① 夫婦それぞれが現実に自由に使えるお金(「基礎収入」といいます。)を認定します。
具体的には、総収入から、公租公課や必要経費を差し引いて計算します。

② 夫婦のどちらが子どもの生活費を負担しているのか、その子どもの生活費は、大人1人の生活費を100とした場合にいくらかかるのかを認定します。
子どもの生活費の割合は、厚生労働省が告示している生活保護基準を参照して求めます。

③ ①で認定した夫婦それぞれの基礎収入の合計額が、夫側と妻側とにいくらずつ割り振られるべきなのかを、②で認定した生活実態をもとに計算します。

④ 婚姻費用をもらう側に割り振られるべき額と、その方の基礎収入との差額が、その方が相手に分担を請求できる額です。
そして従来は、この計算を、個々の事案ごとに丁寧に行っていました。

問題点

この方法の問題点は、本来、生活のための命綱であるはずの婚姻費用の額を求めるのに時間がかかりすぎることです。特に、上記①の必要経費額を実額で認定していたため、当事者双方から膨大な量の資料が提出される上、個々の事案において提出される資料次第で認定額が変わってしまうために協議開始の段階で双方が見通しを共有できず、迅速な解決が困難になりました。

算定表ってどんなもの?

そこで、上記のような問題を克服するため研究をしていた裁判官のグループが、平成15年、研究の成果を発表しました。具体的には、経費の実額認定をやめ、統計資料をもとに「総収入額●円の給与所得者/事業者はその▲%が基礎収入である」と一律に決めてしまうことで、
・夫婦それぞれの総収入がいくらか、また、給与所得者か事業者か
・どちらが何人子どもを育てているか、その子どもが何歳かが分かれば、だいたいの婚姻費用分担額がすぐに計算できる
ようにしました。
そしてその結果を表にまとめて、ビジュアル的にもすぐ分かるようにしました。それが、算定表です。
実際の算定表は、子の年齢と人数に応じて当てはまる表を選び、縦軸・横軸の目盛り上で自分の収入と相手の収入がどこにあたるか確かめ、それをクロスさせれば、婚姻費用が分かるようになっています。

算定表が改訂された経緯って?

平成15年に公表された算定表は裁判実務に浸透し、これを基に婚姻費用分担額が計算されるようになりました。
ただ、その後、社会経済状況が変化し、特に、子どもの教育費用にかけるお金が増加傾向であることから、算定表の基準は実態に合っておらず、不当に低すぎるのではないか、という指摘がなされるようになりました。日弁連も、平成24年には意見書、平成28年には提言を提出し、妥当であると考える新算定表案を公表しました。
このような流れを受けて、裁判所も見直し作業を開始し、令和元年12月、最高裁判所が新算定表を公表しました。
なお、記事等によっては、日弁連の提案のことを「新算定表」と表記している場合もありますが、日弁連案と最高裁の新算定表は内容が異なりますので、ご留意ください。

旧算定表と新算定表の違い

新算定表公表の経緯は以上のようなものですので、算定表の根底にある考え方自体が見直されたものではありません。従来と同様、子どもの人数と年齢、夫婦それぞれの総収入額をもとに、表を選び、目盛りを確認してクロスさせて使います
では何が変わったのかというと、基礎資料等のアップデートによって具体的な額が変動しました。概ね、婚姻費用額を引き上げる方向の改定です。国公立高等学校の学費が下がったことを反映して低下した指数はありますが、最終的な額が減額となることはない、と言われており、数値にして、月1~2万円程度の増額になることが多いと言われています。
実際の新算定表は、以下のサイトから確認することができます。
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

 

婚姻費用を配偶者に請求する際に気をつけるべきポイントはこちらの記事で詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。

 



監修者:弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡
[経歴]
東京大学卒業
第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録

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